ランチェスター経営ジム

岡 漱一郎の
戦略コラム
2024. 09

「離」の道は遠い

守破離という言葉は知っていると思います。意味は剣道や茶道などで、修行における段階を示したものです。

「守」は師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階、「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階を指します。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させた状態です。

この言葉の目的は当然ながら「離」です。「守」という基礎を身に着け、「破」で応用力を高め、基本を作る。「離」は、独自の境地を見出し、師を超えて行きます。

正直言うと、これが出来る人は稀有な存在です。稀有な存在など、努力でなれるものではありません。生まれ持った才能が決めます。

一般的には「守」までは何とか出来ます。大半は「破」が出来ないのです。 理由は、師匠の「守」を鵜呑みにしているからです。その時点で思考は止まっているのです。

「破ってはいけないもの」という思考が無意識にロックオンされては、「破」などに行くわけがありません。

ただ中には、「勘違いの破」もあります。それは、「守」という基礎が出来ていないのに他流に首を突っ込み、「思い込みの離」が始まれば、後は社会から離脱して行くだけです。即ち、いかに強固な「守」を作らなければ、「破」には行けないということです。

スポーツでいえば、「守」は基礎にあたります。基礎の弱いプレイヤーは、長くその世界で戦うことは不可能です。

それが出来た上で、「破」の情報を取り入れ、自分の解釈で咀嚼していく。そして、「勘違いの破」にならぬよう、検証を繰り返す。

この場合の検証とは、「いかなる状況においても、その考えは万能か?本質なのか?」というものです。これが出来なければ、経営コンサルタントという職業を名乗ってはいけない、と自分は思っています。

ましてや「思い込みの離」をまき散らす経営コンサルタントなど、社会悪な存在の極みです。

しかし、「離」の道は遠い、いまだ達せずです。

岡 漱一郎

岡 漱一郎株式会社ハードリング

1962年生。岐阜県大垣市出身、愛知県名古屋市在住。
ランチェスター経営戦略と孫子の兵法を駆使する経営コンサルタント。全国20カ所で毎月勉強会を開催し、指導を受ける経営者は400人を超える。その活動がNHK「クローズアップ現代」で取り上げられ、また建築業界誌「建築知識ビルダーズ」にて「経営戦略ジム」の連載を受け持つ。
また、豊臣秀吉の最初の軍師 竹中半兵衛の家臣(竹中十六騎)、その末裔にあたる。

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